チェスト張り下げ

チェストの“張り下げ”とは


前下の発声筋群(引き下げ筋群)を最後に付け足して、高音を力強く歌う。
ハイラリンクスの状態から起声して、前下にアクセルを踏み込む感じです。
個人的にはチェストを「張り下げている」感覚になります。

チェストは「後」から入らない。
初学者にはそう覚えておいて欲しいのですが、
これは、強いチェストは後から入れづらい。
無理をすると危ない、みたいな意味です。

適切に制御できていれば、メリハリの利いた魅力的な歌唱法であり、
無意識にやれている人たちにとってはごく自然な発声法です。

地声高めの男性と地声低めの女性に多い印象ですが、
声帯のサイズが適していても諸々の条件が揃わないと高確率で喉を痛めます。
初めから苦もなくできる人は、歌の才能がある人だと思います。

【チェスト張り下げの最低条件】

・喉がしっかりと開けていること
・前上(シムラ)が大人しくしていること
・後上(エルモ)と後下(ゾンビ)の引きが強いこと
・前下(ヤクザ)の位置を正しく理解していること

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オフコース/さよなら(張り下げやや強め)



MAKE-UP/ペガサス幻想(張り下げ強め)



どちらも最高音はhiB(B4)。
高音系男子にはなんてことない高さですが、こんな歌い方をしている人は珍しいのではないでしょうか。
平均的な男性がテクニックで再現しようとするなら「免許皆伝レベル」の難易度です。

いきなり、めちゃくちゃ難しいことに挑戦している。

裏声アプローチで頑張っている人が無意識にやろうとしていることが、実はこれなのです。
難易度的に何段階も上だから、いつまで経ってもまともな高音が出せないってわけです。

関連記事:「裏声アプローチ

ボイトレマスター(難民)にありがちなヘロヘロミックスを極めた先とも言えますが、
チェストボイスをきちんと習得しない限り、たどり着くのは……運が良くて来世だと思います。

ハードに歌いたい人もソフトに歌いたい人も、理想的なハイトーンを追求するなら「前下」の使い方を覚えなければなりません。
みっちりと鍛えなければいけない場合もあるし、勝手に動かないように制御しなければいけないケースもあります。

先に手を伸ばすのは、バーベルシャフトを握るようなもの。
後から足を伸ばすのは、地雷原でタップダンスを踊るようなもの。

ここは無難にチェストボイスから始めよう。
中途半端になっている人はチェストボイスから見直そう。
正しいチェストボイスは「筋トレ法の一つ」であって「上手く聴こえる歌唱法」ではありません。

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やり方を間違えていると無意味どころか逆効果なので、
筋肉群が正しく稼動しているか自分で判断できない人は提唱者に尋ねてください。

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