歌唱法解説:仮性ミックスボイス
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仮性ミックスボイスとは
私の造語であり、独自の概念です。
スーパーエルモミックスとかスーパーインチキミックスとも呼べるかもしれません。
後上(エルモ筋群)依存型の発声法
後上(エルモ筋群)に依存したまま、声帯を前下や後下方向にも「申し訳程度」に伸展させます。
呼気は弱めじゃないと破綻しやすいですが「まさにミックスボイス!」という声質を偽装できます。
前上(シムラ筋群)について今まで親の仇のごとく書き腐してきましたが、
後上(エルモ筋群)も同じくらい(それ以上)に厄介だったりします。
実際のところ、シムラは【音色を嫌ってさえいれば】いつかなんとかなるんです。
なんとかならない場合は「喉声ミックスボイス」に進化(深刻化)するだけです。
関連記事:「喉声ミックスボイス」
それはダメ! 喉声ミックスです!
そんな感じに指摘してくるボイストレーナーは少ない、
というか、多くのボイストレーナーが目指している方向なので、
本人が受け入れるなら特に問題はないでしょう。
それに比べてエルモ……。
エルモは嫌いになるのが、難しい。
というか、完全に排除するのはたぶん無理。
地声≒エルモの人だとインフェルノモード(超絶ハード)。
独学だとなるようにしかならないから、
まだどうにかできそうなシムラにターゲットを絞ってきたわけです。
エルモが強敵な理由は単純明快で、
後上(エルモ筋群)に頼り過ぎても、声質がそこまで変にならないから。
初出時の自覚・認識はほぼ不可能。ほとんどの人は「良い傾向」だと思い込んでしまいます。
楽に歌える
大抵はエルモの仕業。
もしくはシムラとの共同作業。
私が提唱する「正しいミックスボイス」よりも省エネ。
大半の“日本人”にとっては自然な発声法……じゃあ、それでいいじゃん?
はい。それでいいです。
って妥協したくなるくらいの強敵。
人体の構造的に、後上に連動して「前下」が少し動いちゃうので……。
あとは「鼻にかけるかかけないか」で色んな声を自在に扱えているかのような【錯覚】に陥ってしまうのです。
厄介度:☠☠☠☠☠☠☠☠☠
独学者が自力でたどり着くと【そこで終了】って感じです。
運良く喉声ミックスを免れたほとんどのボイストレーナーが【これ系】で歌ってますから。
他人に教えたくなるくらいに自信を持ってしまう、という意味での【終了】です。
中級者以下が陥りがちな罠……。
地声が間違ってる人の限界点……。
ちょっと癖が強いかな? でも個性があっていいじゃん!
少なくとも量産型には聴こえない。
だからこそ厄介。
喉声ミックス……みっくちゅぼいちゅ
仮性ミックス……ミックすボイす
このくらい紛らわしいです。
現状の発声バランスで力加減を間違えると喉を痛める危険性が高いので、
声の響きを慎重にモニタリングするためにお風呂場で歌っています。
歌詞やキーの適当さはご容赦ください。
Dream Theater/Another Day(仮性クリーン)
VOW WOW/Rock Me Now(仮性エッジ)
単体で聴くとそんなに悪くはない。これが罠です。
私のコレはエミュレート(残念な発声の模倣)なので、
リアルでこれに近しい状態の人はもっとカッコ良く(残念な感じに)なるかもです。
アゴを上げたくなる衝動は「喉元にナイフが迫っている気配」です。
試してみる人は十分に注意してください。
ポップスでもロックでもメタルでも、全部「後上メイン」でそれっぽくなります。
それっぽくはなるけど、あくまでそれっぽいだけ、デフォルメとかミニチュアみたいなもの。
本物とは全然違うし、残念感は一生付きまとってくると思うので……。
その歌い方はいったん封印して(重要)チェストボイスを見直すことをオススメします。
って書いても……無駄ですかね。
上の音源にもチェストが入っているように聴こえているでしょうから。
実際に入ってますし。
後上に連動して、浅~くうす~く、ですけど。
その「うす~く」を希望的観測で聴き取ってしまうから、
前下の発声位置を誤認してしまう、ってカラクリでもあります。
Dream Theater/Another Day(ライトチェスト)
歌唱力や応用力の違いではなく発声基礎力の差。
前下と拮抗し、後下を補助する。それが後上の役目です。
下側(前下・後下)がきちんと稼動しているかぎり、
後上の挙動が問題になることは、まずあり得ないと思います。
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