発声法分析:さだまさし

シンガーソングライター、タレント、ラジオパーソナリティ、映画監督、小説家……。
多方面で長く活躍されている、さだまさしさん。
長崎県長崎市のご出身。漢字表記(本名)は佐田雅志。
國學院大學法学部中退……ちょっと意外のような、納得のような?



優しく語りかけるときは前上が優位ですが……。
ちょうど鼻の下が伸びてる部分というか、
よく使っているのは前歯の内側くらいの低い前上に聴こえます。

前上をその場所に留めているのは「後下」の強さ。
語り口が重くなるときはだいたい後下が優位になっています。

基本的には下側が強めなタイプかと思いますが、あまり偏りはない。
歌詞や感情表現に合わせて、各発声筋群がスムーズに連携しているようです。

0:58~

この町“を”

震えながら上擦っている、さだまさしさんの特徴的な表現(?)。
ここでは後上が強く入っていますし、

1:12~

手紙が無理ならぁ↑

前上 → 後下 → 後上

ここまで単純ではないけど、声の響きが気持ち良く繋がっています。
軽めに聴こえるけど後下には相当強く引いてるので、
下側の響きが聴き取れていない人がモノマネすると志村発声になってしまう可能性が高そうです。

1:20~

一言でも“いい”

ここでも後上が入ってきますが、
後下に重さを残した絶妙な力加減です。

心に染みる、みたいな歌唱表現じゃないでしょうか。
実際聴いてて、心に染みる感じがするので。

2:28~

案山子がひとり

ボソッと独りごちるような浅めの前下。
うらびれた、もの寂しい感じ。

2:50~

体をこわしてはいない“か”

かー の あー が おー に化けてます。

前上が抜けてますよ。
レッスンだとそんな指摘をすることもあるのですが、

あー って最後まで前上で処理しちゃうと……。
自分で歌ってみればわかりますけど、軽すぎて歌詞に説得力が生まれません。
前上が抜けてるのではなくて、そういう表現をするために後下が頑張っているのだと思います。

さだまさしさん。

CD田中のネタ元(?)くらいのイメージしかなかったのですが、
あらためて聴いてみると素晴らしいですね。
なんかしんみりしちゃいました。

30億円の借金を返せる喉って、
やっぱり普通じゃないです。

関連記事:「プロとアマの違い
関連記事:「声帯を引く方向(喉を開く方向)
関連記事