発声法分析:デイヴィッド・カヴァデール(David Coverdale)

シンガーソングライターのデイヴィッド・カヴァデール。
ディープ・パープルやホワイトスネイクのボーカリストとして知られています。
出身はイングランドで、2007年にアメリカに帰化したそうです。

リクエスト頂いたのは「Deep Purpleの頃のデイヴィッド・カヴァデール」ですが、
歌い方の変化が激しい人なので、ちょっと先まで分析してみます。



こちらは1974年。
スモーキーで芯が太い歌声。

四方向は後下が超絶強い(深い)。
メインで使っているのは後下周辺。
前下も強めですが、後下が強すぎるので補助に回るしかないって感じ。

とにかく下側で頑張りすぎ。

発声バランスが後下に偏っているとも言えます。
歌ってる表情とか体勢を見ればわかりやすいですね。

常に後ろ髪を引っ張られてる、感じがしません?

グレン・ヒューズ(ベース担当)が前上(喉声)寄りなので、良い対比になっていると思います。
二人とも個性的というか癖が強いので聴き手を選ぶ歌声と呼べるでしょう。

好きな人にはたまらないかもですが、
こういう「魅力的な歌い方」を続けていると喉を痛めやすいです。

自然と“やれてしまっている人”はこういう歌い方しかできないので、
こういう歌い方が二度とできなくなる程度まで、発声筋群を酷使したり声帯粘膜を劣化させてしまいがちです。



こちらは1987年。

前上側に幾分シフトして、声が軽くなってます。

が、同世代や今時のハイトーンボーカリストに比べれば後下にかなり偏重してます。
そもそもカヴァデールは無理してハイトーンを出してるタイプだと思うので、

2:40~

の展開とか、命を削っている感じがしてゾクゾクします。
聴いてるだけでヒヤヒヤしますが、歌っている本人は意外と大丈夫、
のような気がするんですよね。

A.後下重過ぎ



B.後下重め



C.後下やや重



1974年はAくらい。
1987年はBとCの中間くらいかな?



こちらが2004年。

後上が強く入るようになって、全体的に上側にシフトしてます。
声色も表情も魔女化してる感じですね。

なんでこんな極端に……。
これはこれでいいんでしょうけど……。
なんかキタキタおやじが歌ってるみたい……。

好きな歌手がこうなると悲しいですね。



天才は加減を知らない


歌の神様がそれを教えるはずがない。
神様もきっと、ゾクゾクしたいはずだから。

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