ポジションを変えよう(捨てよう)

声のポジションではなくて
心のポジションのお話です。

出せない声は聴こえない


ボイストレーナーの真似事を続けるほどに実感します。
これはほとんど「呪い」みたいな発声あるあるです。

自分がずっと上側(特に後上)に頼りきりの発声をしていて、
上側で作った響きしか聴き取れていないと、

スピッツは軽い(薄い)声

とか思っちゃいます。

その時点で聴き取れていないのだから当たり前です。
草野マサムネさんの「声の芯」は上側にないのだから。

なので思うぶんには仕方ない、のですが……。
ちょっと迂闊な人だと、
え? こんなオカマ声のどこがいいの?

とか誰かに、言っちゃう。
例えば、実際に、スピッツが好きな人に“言っちゃった”。
わりと強めのポジションを持っちゃった。

でもそのうちボイトレに興味を持っちゃって、
何かの拍子に妙なブログを見つけちゃったりして、

「アレ?」

は? 嘘だろ?
“こんなところ”に【声】があるはずが……

関連記事:「スピッツは大型犬!

それは新しい世界の扉かもしれない。
もしかして、もしかすると、

草野マサムネって……化け物では?

すごい。ぼくにはとてもまねできない。
気づいた時点で、素直に認めちゃえばいいんですが、

え? こんなオカマ声のどこがいいの?

これが十年前の発言だとしても、
過去の自分と現在の自分で、ちょっくら黒歴史的なモヤモヤが生まれます。
今までの自分と新しい自分が対立する、とも言い換えることができるかもしれません。

関連記事:「認知的不協和(独学困難者が直面する精神的課題について)

↑を乗り越えられない人。
今までの自分と上手く折り合いがつけられない人は……。

なんだ、ただの勘違いか
草野マサムネって、やっぱりオカマ声じゃん

という結論ありきで、自分を納得させるために、
草野さんの歌声のオカマ成分だけを「粗探し的」に聴いてしまいがちです。
極端な人だと、下方向の要素を忌避・排除するようになってしまうかも。

人間の耳なんて適当で曖昧です。
成長過渡期であれば尚更です。

自分の“聴きたい”ように、他人の声が聴こえます。

歌を聴く前から「志村発声?」なんて疑っていると、
ポップス歌手の多くが志村発声に聴こえることでしょう。
重点的にシムラ成分だけを耳で追ってしまうからです。

喉声でも地声でも裏声でも声門閉鎖は声門閉鎖。
誰かの地声閉鎖は、誰かにとっての裏声閉鎖かもしれません。

関連記事:「地声も裏声も結局同じ

自分の「常識外」の場所に「他人の声」が無数に存在する。

これは私は私の「常識の範囲内」でしか、
他人の声を認識できないということでもあります。

そんなわけで、発声の指導においては(に限らないけど)、
お互いの常識や感覚をきちんと擦り合わせることが重要なのです。

声や響きを【よく】聴きましょう。
ですが、自分に都合が良いように【聴こう】としてはいけません。

「アレ?」

この違和感を大切にしてください。
第一印象がだいたい正解です。

変節を恐れるな!


葛藤を糧にせよ!


本懐を忘れるな!


スピッツが好きな人に突っ込まれたら、簡単に謝っとけ。
謝ったら死んでしまう一族の人は、適当に誤魔化しとけ。

とにかく、
今までの自分を守るために、新しい自分を閉ざしてしまうのは……。
モッタイナイことだと思うのです。

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