完璧な音程

Youtube等でたまに見かけるのですが、生歌風に見せかけてエフェクトをバリバリに掛けている人。
もう少し上手く誤魔化せないのか、ってくらいオートチューン全開だったりします。
まるで人面ボーカロイドです。フレーズの途中で声がシンセサイザーになっています。

歌自体は下手ではないと思うのですが、あの感じだと合っている音程の方が少ないのではないでしょうか。
ちょっと耳が良ければ違和感に気づくし、MIXに携わっている人なら笑ってしまうようなお粗末なものらしいです。
だいたいそういう人ってコメントの突っ込みを無視しているのでそれでお察しになります。
たいてい声自体もあまり響いていないです。上辺ばかりを気にしてきた結果だと思います。

音程の揺れ。フラット気味。シャープ気味。
これらは発声の粗ではありますが、人間の特徴でもあります。
粗だからと完全に消し去ってしまうと人間味がなくなるのです。ボーカロイドの誕生です。

人間と機械。機械化された人間。アンドロイドとボーカロイド。
ジャストな音程で終始歌い続ける生身の人間もいるにはいますが、もちろん少数派です。
機械でいじった多くの音源は「音程だけが不自然にジャスト」なのです。
完璧な音程に見合うだけの歌唱力が備わっていないから違和感が出てしまうのです。
補正箇所で呼気の流れが途切れたり、フレーズの端々に「そうはならないでしょ」って場面が頻出します。

しかしオートチューン全盛の現代……。
プロアマ問わずそんな音源ばかりなので「完璧な音程」に慣れてしまっている人が多いようです。
音程は合っていて当たり前、こういう風潮はあまり良くないです。
一曲通して歌って音程がまったく外れないなんて思わない方がいいです。
これは私が音痴だからではありません。決してポジショントークではないのです。
ほ、本当ですよ? 信じてくださいね。

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完璧な音程が当たり前になった結果、小声でボソボソと音程だけが合っている「棒歌い」が増えるからです。
感情を込めたり声の響きを重視すれば、程度によりますが音程なんて普通に外れます。
これはプロアマ問いませんし、平均程度の音感があれば「あ、今外れちった」って自分で気づきます。
音程は合っているに越したことはありませんが、ある程度のズレはみんな織り込み済みなのです。

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プロが音を外しただけで鬼の首でも取ったかのように「下手くそ」だとか決め付けてませんか?

ボーカロイドと生身の人間くらい聴き分けてください。
機械の採点ではなく人間の反応を気にしてください。
声の響き、独特なトーン、微妙なニュアンス、タイム感、グルーヴ感、ダイナミクス……。
音程と同等以上に気にしなければいけない要素は盛りだくさんです。
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